覚醒時ブラキシズムって何?その概要や対策を解説
2025/07/20

こんにちは、綾瀬の歯医者、新井歯科医院です。
歯ぎしりや食いしばりに関して、普段意識することはあまりないという方も多いのではないでしょうか。
しかし、何かに集中しているときやストレスを感じているとき、さらには睡眠中に、歯ぎしりや食いしばりを無意識に行っている方は意外と多くいます。
慢性的な疲労感や肩こり、頭痛などの症状が続くという方は、歯ぎしりや食いしばりが原因になっている可能性もあります。
今回は、このようにあごや歯に悪影響を与える歯ぎしりや食いしばり、タッピングといったブラキシズムについて解説します。
覚醒時ブラキシズムとは

「ブラキシズム」とは、歯ぎしりや食いしばりといった、上下の歯を接触させる癖を指します。ブラキシズムには、歯を擦り合わせる「グラインディング」、歯を強くかみしめる「クレンチング」、上下の歯をカチカチと合わせて音を立てる「タッピング」などがあります。
これらの行為は、その行為が現れるタイミングによって「覚醒時ブラキシズム」と「睡眠時ブラキシズム」に分類されます。
覚醒時ブラキシズムは、日中の活動時に行われる歯ぎしりや食いしばり、かみ締めなどのことです。
TCH(Tooth Contacting Habit)という長時間にわたり歯が接触し続ける状態も、広義の覚醒時ブラキシズムとされます。
睡眠時ブラキシズムとは

睡眠時ブラキシズムは「過度の覚醒活動に関連する睡眠中の歯のグラインディングまたはクレンチングを特徴とする口腔異常機能」と定義されています。
グラインディングとは上下の歯をすり合わせて音を立てる歯ぎしりのことであり、クレンチングとは歯を食いしばる行為のことです。
睡眠の質が悪化すると浅い睡眠が増え、ブラキシズムを誘発するリスクが高まると考えられています。
ブラキシズムの原因
ブラキシズムの原因については、まだ解明されていない部分が多くあります。
かつてはかみ合わせの問題が原因であると考えられていましたが、科学的な裏付けは得られておらず、近年の研究では脳の興奮に起因するという説も出てきています。
また、睡眠時ブラキシズムは、睡眠が浅くなったタイミングでより発生しやすく、この睡眠の質の低下は、ストレスや不安、過度なアルコールの摂取、喫煙など多くの要因によって引き起こされます。
心因的なストレスや生活習慣がブラキシズムを誘引するため、これらの因子をコントロールすることが予防に重要です。
歯ぎしりや食いしばりによるリスク
歯の摩耗

歯ぎしりや食いしばりが続くと、歯の表面が摩耗してしまいます。
その結果、歯を構成するエナメル質と象牙質が損傷を受け、虫歯ができやすくなるほか、歯根部分が露出しやすくなります。
また、歯の形状が変わるため、かみ合わせがズレたり、あごの運動異常が発生するリスクも増加します。
顎関節への影響

長期間にわたる歯ぎしりや食いしばりは、顎関節にも影響を及ぼします。
具体的には、顎関節に痛みや不快感をもたらし、顎関節症や関節のズレを引き起こす可能性があります。
また、顔や頭部の筋肉が緊張しやすくなり、頭痛や顔の痛み、さらには肩こりといった症状を引き起こすこともあります。
歯の破損や欠損
歯ぎしりや食いしばりの習慣が続くことで、歯が破損したり、欠けてしまったりすることがあります。
損傷を受けた歯は、ダイレクトボンディングやかぶせ物などにより治療をする必要があります。
知覚過敏

エナメル質の摩耗によって、知覚過敏がより起こりやすくなります。
冷たい飲み物や食べ物が歯にしみる象牙質知覚過敏症は、放置すると痛みが増し、症状が悪化すると日常的に痛みを感じるようになります。
歯周病のリスク増加
歯ぎしりや食いしばりが歯周病を直接引き起こすわけではありませんが、すでに歯周病の兆候がある場合、これらの行為が歯や歯ぐきに余分な力を加えてしまうことで、状態を悪化させ、歯周病の進行を早めるリスクがあります。
歯並び・かみ合わせの悪化

常に過剰な力が歯に加わることにより、歯並びやかみ合わせが変化するリスクがあります。
歯並びやかみ合わせの悪化は、見た目の問題だけでなく、咀嚼機能や清掃性に影響を与えます。
少しのずれによって清掃性が悪化し、虫歯や歯周病ができやすくなってしまうこともあります。
口内炎
歯ぎしりや食いしばりにより、歯の表面が頬の内側に常に押し付けられていると、口内炎や潰瘍が発生するリスクが高まります。
口の粘膜に痕がついているという場合には、医療機関を受診して対策をとるようにしましょう。
ブラキシズムの検査方法
ブラキシズムの診断は、歯の著しい摩耗や咀嚼筋の疲労、痛みの有無が主な指標となります。
口を開けにくいといった症状が昼間にあるのか、寝起きだけなのかを確かめることで、覚醒時ブラキシズムか睡眠時ブラキシズムか、あるいはその両方なのかを判断します。
ブラキシズムの対策・治療法
セルフケア
覚醒時ブラキシズムの場合、まずは普段から「上下の歯が当たっていないか」「あごに力が入っていないか」を意識して自覚することが重要です。
食事や会話中などの時間以外は上下の歯が接触しないようにし、あごをリラックスさせることを心がけましょう。
睡眠時ブラキシズムについては、睡眠の質を高めるための生活習慣の見直しが重要です。
就寝前のカフェイン、アルコール、ニコチンや刺激物の摂取のほか、スマホやテレビなどブルーライトを発する機器の使用、激しい運動を控えるようにしてください。
マウスピース

マウスピースは、ブラキシズムによる歯やあごへのダメージを軽減するための代表的な方法です。
一般的には上顎の型を取って作成され、就寝時に着用します。これにより、睡眠時の歯ぎしりや食いしばりの際に生じる圧力や衝撃を吸収分散し、歯やあごにかかる力を軽減することができます。
インターネット通販などでもマウスピースは市販されていますが、自分の口に合っていないマウスピースの使用は口腔トラブルを増加させてしまうリスクもありますので、歯科医院で作成するようにしましょう。
まとめ

無意識に行われる歯ぎしりや食いしばりは、さまざまな健康リスクを伴います。
日々の生活の中で何気なく行っている行為が、実は慢性的な症状の原因となっているかもしれません。
「起床時にあごの疲れがある」
「家族から歯ぎしりを指摘された」
「気づいたら歯を食いしばっている」
など、思い当たる節がある方はぜひ一度歯科医院でチェックを受けてみてください。